学校保健委員会講話2025
「飛沫感染」ってどういう意味? マスクは何のため?
~~~最新ガイドラインに見る飛沫感染とマスクの考え方~~~
2025/11 学校医 vogelsang7
《要点》
①
肺炎マイコプラズマ、百日咳の流行が続く一方、今年もインフル、コロナが冬に同時流行する見込み。
②
コロナ後遺症で不登校の原因になる場合もあり、ふだん健康な小児や若者でも場合によっては「ただの風邪」ではすまない。最新ガイドラインでは軽症の新型コロナ感染にも抗ウイルス薬の処方が拡大されている。
③
「飛沫」についての考え方に大きな歴史的変化が進行中です。飛沫感染→飛沫・エアロゾル感染→空気感染という“飛沫概念の過去・現在・未来の3段活用”で理解しよう。
④
「マスク」についての考え方に大きな歴史的変化が進行中です。肺炎マイコプラズマ、百日咳、インフル、コロナなどの「飛沫感染」に有効な対策は、主に換気とユニバーサルマスクである。
今回は新型コロナウイルス診療の最新ガイドライン『5学会による新型コロナウイルス感染症診療の指針』 にもとづいて、「飛沫感染」とされる呼吸器感染症の対策についてお話します。そしてその背景にある米国CDCやWHOのコロナ禍以前と以後での考え方の大転換について解説します。
【1】この冬はコロナ、インフルの流行と、肺炎マイコプラズマ、百日咳の流行が同時進行の恐れ。
静岡県感染症週報から。第43週(10/20-10/26)の状況。
インフルエンザ---A型が早めの流行。この冬も流行する見込み。ピークは1月前半?
コロナ---通年流行と夏冬2回の感染拡大が定着。この冬も感染拡大する見込み。ピークは2月初め?
肺炎マイコプラズマによる肺炎---感染から潜伏期をへて2週間で発症する感染症。まだ感染のリレーがつづいている。
百日咳---流行が続いています。第40週(9/29~10/5)は、静岡市・西部保健所管内で増え、今後、さらに増加する可能性もある。コンコンという咳が連発して夜眠りにくい場合には、マスクを着用して、早めに受診しよう。
静岡県感染症週報 第43週:10月20日~26日(10月31日更新)
https://www.pref.shizuoka.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/068/844/43idwr.pdf
【2】コロナは、オミクロン株になっても命に関わりうる病気。後遺症も注意。
2024年の人口動態統計より。
オミクロン株は弱毒化したとか、季節性インフルエンザ並みと言われがちだが、昨年令和6年も日本人の死因の第8位(2.2%)(コロナの死亡者数は年間35,865人) 。コロナの死亡者数はインフルエンザの死亡者数(2855人)の約13倍(令和5年は30倍)。
令和6年(2024)人口動態統計月報年計(概数)の概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai24/dl/kekka.pdf
東京都保健医療局 リーフレット(患者向け/保護者向け/教職員向け/企業向け)
https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/kansen/corona_portal/link/kouisyou.html#cmsreaflet
【3】変わりつつある抗ウイルス薬の使い方———早期受診・早期診断・早期治療へ
最新ガイドラインでは「早期診断・早期治療」の考え方のもと、抗ウイルス薬の適応が広がった。抗ウイルス薬には、発症初期の症状を早く改善させ、重症化を予防する効果が確認されている。後遺症(罹患後症状)を防ぐ効果については、今後の研究で明らかにされることが期待されている。
旧ガイドライン(『診療の手引き10.1』 2024/4/23)
低リスク、軽い症状の患者には抗ウイルス薬を処方しないことが推奨されていた。
厚労省 『新型コロナウイルス感染症 診療の手引き 第10.1版』 2024/4/23 https://www.mhlw.go.jp/content/001248424.pdf
低リスク、軽い症状の患者は、“受診して検査や診断をする意味がない”という風潮を招きがちだった。
↓
最新ガイドライン(『5学会指針』2025/9/26)
軽症も含め早期診断・早期治療こそが本人や社会のためになる、という考え方を明確化した。
低リスク、軽い症状の患者にも、抗ウイルス薬を処方する選択肢が広がった。
日本感染症学会ら5学会 『5学会による新型コロナウイルス感染症診療の指針』 2025/9/26
https://www.mhlw.go.jp/content/001580139.pdf
最新ガイドラインは、早期受診・早期検査・早期治療で本人と社会の被害を最小限にする、という考え方。
早期検査のためには発症直前からウイルスを検出できるPCR検査がベター。(抗原検査では発症後24時間程度偽陰性になることがしばしばある。セルフ抗原検査では鼻の浅いところしか触れず感度が低い。)
【4】変わりつつある「飛沫感染」の考え方———“飛沫概念の過去・現在・未来の3段活用”
https://www.mhlw.go.jp/content/001301258.pdf
従来、飛沫感染による感染症(呼吸器感染症のほとんど)は、「飛沫を吸い込む」ことで感染するという説明がなされてきた。そのような説明は最近もしばしば見かける。
東京都保険医療局 2025/10/1
https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/kansen/info/influ/influ
https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/hokeniryo/2025influ_leafleta4-pdf
空中をただよっている見えないエアロゾルを吸い込むのはイメージしやすいだが、飛んでいるしぶきを吸い込む、というのは本当だろうか?
コロナの最新ガイドラインでは、WHOやCDCの新しい考え方を反映して、「飛沫を吸い込む」という誤った説明は廃止されている。
日本感染症学会ら5学会 5学会による新型コロナウイルス感染症診療の指針 2025/9/26
https://www.mhlw.go.jp/content/001580139.pdf
《吸い込む》のは 飛沫じゃなくて エアロゾル
(《飛んで落ちる》のが飛沫)
「飛沫を吸い込んで感染する」インフル、マイコプラズマ、百日咳、RSウイルスなどは、実はすべてエアロゾル感染!
《飛沫(しぶき)》→ボールのように飛んで落ちる→口や鼻や目の粘膜に飛び込む→2m以内で感染をおこす。
《エアロゾル》→霧のように空中に漂う→口や鼻で吸い込む→換気の悪い空間では2mを超えて感染をおこす。
逆に言うと、
空中から口や鼻や目の粘膜に飛び込む粒子→《飛沫(しぶき)》と呼ぶ。
空中から口や鼻で吸い込む粒子→《エアロゾル》と呼ぶ。
空中の粒子の体への侵入ルートの違いが本質。粒子それ自体に粒子サイズなどでの根本的違いはない。実際には粒子の大小のサイズは連続的に分布している。最終的には、「飛沫」「エアロゾル」という区別した呼び名は不要になる。
空中の粒子による感染→すべて《空気感染》と呼ぶ。 (古い「空気感染」概念とは別)
《空気感染》のうち、飛び込んで感染する(《直接落下》)経路と吸い込んで感染する(《吸入》)経路がある。
2023年から2024年にかけて米国CDCやWHOが打ち出したこの《空気感染》の新しい考え方を、新ガイドラインが踏襲している。
米CDC DRAFT 2024 Guideline
to Prevent Transmission of Pathogens in Healthcare Settings 2023/11/3
https://www.cdc.gov/hicpac/media/pdfs/DRAFT-2024-Guideline-to-Prevent-Transmission-of-Pathogens-2023-10-23-508.pdf
米CDC A CDC Update on the
Part One Draft update to the Guideline for Isolation Precautions: Preventing
Transmission of Infectious Agents in Healthcare Settings 2024/1/23 https://blogs.cdc.gov/safehealthcare/draft-2024-guideline-to-prevent-transmission-of-pathogens-in-healthcare-settings/
WHO 『空気経路伝搬病原体の用語案に関する世界的技術協議報告書』 Global
technical consultation report on proposed terminology for pathogens that
transmit through the air APR.18.2024
空中の粒子により感染するインフル、マイコプラズマ、百日咳、RSウイルスなどなどは、すべて空気感染!
今後しばらくは、専門家の説明にもメディア報道にも感染症の説明に旧い用語法・旧い考え方と新しい用語法・新しい考え方が混在することになる。
混乱した旧い「飛沫感染」(飛んで落ちる&吸い込む)
→飛沫・エアロゾル感染(飛んで落ちる&吸い込む)と言い換える(『5学会指針』方式)
→粒子の空気感染(吸い込み感染&落下感染)と言い換える。(CDC2024方式)
この“飛沫概念の過去・現在・未来の3段活用を頭に思い浮かべることが、「飛沫」概念のリテラシーとして当分のあいだ必要になる。
【5】変わりつつあるマスクの考え方———マスクでは吸入予防できないのか?
大正時代にスペイン風邪対策としてマスクを呼びかけるポスター
「マスクをかけぬ命知らず!」———そのマスクは何のため?
インフルエンザやコロナ患者を家庭内で看護する際はマスクしましょう。———そのマスクは何のため?
東京都保険医療局 2025/10/1
https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/kansen/info/influ/influ
東京iCDC専門家ボード 新型コロナウイルス感染症 自宅療養者向けハンドブック(第3版)
2022/1/1
https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/hokeniryo/zitakuryouyouhandbook02
患者がマスクをするのは、病原体を咳などで吐き出さないため(排出予防 Source
control)。他方、患者でない人がマスクするのは、一般の素朴なイメージでは、自分が病原体を吸い込まないため(吸入予防)だと考えやすい。
しかし、従来の医学教育では“マスクは感染者が咳などで病原体を排出するのを防ぐためのものだ。マスクに吸入予防効果はない。吸入予防にはN95を使うのだ”と長らく教えられてきた。マスクに吸入予防効果があるという素人考えは幻想だ、と。この医学教育の考え方が、「とっさに袖で口元を覆う」咳エチケットの中にマスクを同列で含める扱いの理由になっている。
厚労省 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000187997.html
看護する人のマスク、意味がないのだろうか?マスクつけるとき、顔との隙間をなくす努力に意味はないのだろうか?マスクと「とっさに袖で口元を覆う」咳エチケットとは同列だろうか?
環境省ホームページより https://www.env.go.jp/air/osen/pm/info/cic/attach/briefing_h25-mat04.pdf
石垣 陽 マスクの安全を守る静電気技術 2021/3/1 http://www.i-s-l.org/shupan/pdf/SE202_3_open.pdf
ポリプロピレン(PP)という高分子でできた不織布マスク(サージカルマスク)の繊維間の隙間は約1〜5 µm。繊維の隙間の大きさだけで考えると0.1µm程度のウイルスが通過してしまいそうだが、これはよくある誤解。ポリプロピレン(PP)のような高分子絶縁体(誘電体)は、プラスとマイナスに分極した状態を保持するエレクトレット(electret)効果をもち、磁石に類比して電石とも呼ばれる。その静電気力で微小粒子を吸着し、ウイルスや微細エアロゾル(0.1µm以下)も捕集可能である。
2021年6月16日に、国際的なASTM規格に準じて医療用マスク、一般用マスク、感染対策医療用マスクに関する日本産業規格(JIS)が制定された。
サージカルマスク 一般用マスク(どちらも英語では mask) N95(英語では respirator)
医療用マスク及び一般用マスク(JIS T 9001) 感染対策医療用マスク(JIS T 9002)
医療用のサージカルマスクは、JIS T 9001かつクラスⅢのもの。
クラスⅢはPFE(Particle Filtration Efficiency 微粒子捕集効率)≧98%。 微粒子(Particle)として0.1µm粒子で試験している。サージカルマスクの繊維の吸入フィルター効果はすこぶる高い。
しかし問題になるのは漏れ率(肌とマスクの隙間から漏れて吸入される粒子の通過率)。
強力な2本のゴムバンドでフィルターを頭にくくりつけて顔にフィットさせることで漏れ率5%未満(粒子の捕集率95%以上)を可能にするN95と異なり、一般的形状のサージカルマスクの通常装着では実験で50~90%台の漏れ率。鼻のワイヤーなどの調節を意識すれば30~50%台まで低下。(別売りのフィッティングバンドなどを追加して使うと10%程度に抑えられることもあります)。最近の立体マスクで改めて実験したらどうなるのか、興味深いところ。
慶応大学 奥田知明教授 マスクによる粒子捕集効果の実験結果の公開
https://www.st.keio.ac.jp/education/research/covid-19_02.html
https://www.youtube.com/watch?v=APZ5oEeiolA
従来の医学教育は漏れ率の高さを理由にマスクの吸入予防効果は幻想だとする。
その背景には、医学的な国際基準のように扱われる米国CDCのガイドラインが、マスクの吸入予防効果を全否定してきたことがある。1910年代、Charles V. Chapinが築いた感染経路理論では、できる限り接触感染のモデルで考えるのが科学的だとされた。空気感染があるとしても影響は無視できるほどで、空気から感染するのではと怖がるのは、非科学的な「瘴気説」という迷信だと馬鹿にされた。ただしその後だんだんと例外が定まってきて、結核菌、麻疹ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルスという3つは空気中に浮遊する微粒子を吸入して感染する感染症だとされて特別に「空気感染」と呼ばれ、その3つについてはN95や陰圧室の特別対応が必要だとされるようになった。
Jimenez et.al. What Were the
Historical Reasons for the Resistance to Recognizing Airborne Transmission
during the COVID-19 Pandemic? 2022/8/21 https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/ina.13070
米国でももともとマスクはなんとなく病原体の吸入予防と思われて使われていたが、マスクをしていても結核に感染する例が多かったため、1996年にCDCは“吸入予防の目的でマスクを使うな。吸入予防効果があると言えるのはN95だけだ”、というふうにガイドラインに定めた。飛沫感染は飛んでくる“しぶき”との接触による感染であり、吸入によらない感染だとして、「飛沫感染は理論的には接触感染の一つの形式である」と明言。ついでに飛沫感染は飛んで落ちるしぶきとの接触感染だから換気も不要とされ、カーテン程度の遮蔽物で隔離できるとされた。
米国CDC Guideline for Isolation
Precautions in Hospitals 1996/1/2
https://doi.org/10.1086/647190
そして飛沫予防策のマスクは3つの目的でするものだとされた。1)飛んでくる飛沫との接触防止 2)医療者からの飛沫の排出防止 3)患者からの飛沫の排出防止。マスクを吸入予防のためのN95と混同をしないことをきつく注意した。(したがって、厳密にいえば、「飛沫の吸入」というありがちな言い方は2007年までのCDCガイドラインから外れた邪道な言い方)。
米国CDC "2007 guideline for isolation precautions : preventing
transmission of infectious agents in health care
settings" 2007/12/7
https://www.ajicjournal.org/action/showPdf?pii=S0196-6553%2807%2900740-7
このCDC2007の考えを徹底化すれば、マスク否定論に行きつく。漏れ率が高いのだから、吸入予防だと思って「看護者はマスクを顔と隙間のないようにつけましょう」と指導するのは誤りだ。フェイスシールドがあればマスクはいらない。N95を顔にぴったりフィットさせて家庭で看護するのはふつう無理だから、吸入予防は家庭ではやりようがない。できるのは換気程度だ、と。家庭内感染を予防するためのマスクの役割を認めない、家庭内感染の予防をほぼ放棄する極端な説である。コロナ禍のマスクへの反発で、このようなマスク否定論者が専門家の中にも発生し、いろいろな場で発言している。(実際にはたいていの医療者はこのような極端説は信じ切れず、内心ではマスクになんとなくある程度の吸入予防効果を期待してつけるものである)。
・マスク否定論が起こしたコクランの謝罪騒動
コクラン・レビューという研究レビュージャーナルが2023年1月30日に公表したレビュー「Physical interventions to interrupt or reduce the spread of
respiratory viruses」では、地域社会でマスク着用の呼びかけ(マスク配布+着用奨励といった介入)をした複数の研究を調べ、けっきょく研究の質のばらつきのためマスク着用の呼びかけによる感染症蔓延抑制効果については確たる結論が出せなかったと述べた。そのレビュー論文の一部の文言が切り取られ、SNSで「マスク自体に効果はない」と誤った形でマスク否定論者に広められた。それに対し、マスクには効果がある、と多数の研究者が猛烈に批判した。誤解を招いたとして3月10日にコクラン編集長が、このレビューはマスク自体の効果を否定するものではない、と謝罪し、レビュー論文の文言を一部訂正した、という一件があった。
Jefferson
et.al. Physical interventions to interrupt or reduce the spread of respiratory
viruses 2023/1/30
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36715243/
Karla Soares-Weiser Statement on 'Physical interventions to interrupt or reduce
the spread of respiratory viruses' review 2023/3/10
https://www.cochrane.org/about-us/news/statement-physical-interventions-interrupt-or-reduce-spread-respiratory-viruses-review?utm_source=chatgpt.com
・実験での漏れ率はそれなりに高いのに、ユニバーサルマスクは有効。この見かけ上の矛盾をどう考えるか。
ユニバーサルマスクの有効性を示す研究は蓄積してきている。
例)「米国マサセッツ州10病院群で、ユニバーサルマスク義務解除期にインフル・コロナ・RSなどの呼吸器感染症の院内発症比が
約2倍以上(7.6%→15.5%) に上昇し、ユニバーサルマスク再導入時で8.0%まで低下した」。
Pak et.al. Testing and Masking Policies and
Hospital-Onset Respiratory Viral Infections 2024/11/27 https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2827170
日本の専門家がユニバーサルマスクの有効性を確認したレビューとして厚労省のアドバイザリーボードに文書が提出されている。
厚労省 新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード マスク着用の有効性に関する科学的知見2023/2/8 https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001055263.pdf
今回のコロナの最新ガイドラインでも、ユニバーサルマスクの有効性は明言されている。
・コップの中の半分の水———“ないも同然”と見るか、“半分はある”と見るか
マスクの漏れ率の高さをどう見るか。コロナ禍において、WHOと米国CDCは、マスクの吸入予防効果を“ないも同然”とみなす立場から、“ある程度はある”とみなす立場へ転換した。
CDCガイドライン2024(草案)
「マスクとは、鼻と口を覆って装着する器具であり、主に次の三つの機能を果たす:(1)
鼻や口の粘膜への直接的な飛沫の付着を防ぐこと、(2) 呼気中の呼吸分泌物を内側に封じ込めること(発生源対策:source control)、(3) 吸入される空気をろ過すること。マスクには、サージカルマスク、フェイスマスク(プロシージャーマスクとも呼ばれる)、および高性能バリアフェイスカバーが含まれる」。
CDCホームページより
米国CDC Masks and Respiratory Viruses Prevention
https://restoredcdc.org/www.cdc.gov/respiratory-viruses/guidance/index.html
WHOホームページより
Masks should be used as part of a
comprehensive strategy of measures to suppress transmission and save lives; the
use of a mask alone is not sufficient to provide an adequate level of
protection against COVID-19.
If COVID-19 is
spreading in your community, stay safe by taking some simple precautions, such
as physical distancing, wearing a mask, keeping rooms well ventilated, avoiding
crowds, cleaning your hands, and coughing into a bent elbow or tissue. Check
local advice where you live and work. Do it all!
Make wearing a
mask a normal part of being around other people.
『5学会による新型コロナウイルス感染症診療の指針』は、まだマスクの吸入予防効果を認める立場に踏み込んでいないが、日本の感染症学も今後CDCやWHOに追随すると思われる。
・マスクの表面を触ってはいけない?———「接触感染」の思考法に囚われた迷信
新聞記事より
「手首マスク」批判におこたえします 読売新聞オンライン 2023/08/08~~~~~
「マスクが汚染されて危険」は都市伝説
この点について、改めて西村さん(西村秀一 国立病院機構仙台医療センターのウイルスセンター長)に聞いてみました。
「手首マスク、問題ないと思います。マスクがどこかに接触したら菌はつくかもしれませんが、仮についてもそこら辺に普通にある菌で、人に悪さをする菌がつくことはないでしょう。まして、マスクの上に、生きたウイルスは絶対にいません。『マスクが汚染されて危険だ』という話は、素人の都市伝説のようなもので、それをまことしやかに一般に流布させた『素人の専門家』に罪があります。医療現場発の指導のようですが、医療現場でも想像上のリスクであり、マスクが汚染されているというまともな論文はないと思います」
ただ、西村さんは、手にマスクを持っているとそのうちどこかに落とすのではないか、と考え、手首マスクはやらず、普段は胸ポケットに入れているそうです。
~~~~~~~ https://www.yomiuri.co.jp/column/naruhodo/20230804-OYT8T50041/2/
“マスク表面を触るな”は都市伝説。マスクは何度も手で触ってしっかりフィットさせてよい。
“マスク表面を触るな”は、飛沫感染症は、人間が飛沫を浴びまくっていて、その飛沫が物体表面で長時間感染性を持つから感染を起こすのだろう、という思い込みからきた迷信にすぎない。
参考)菅谷憲夫 (編著)『インフルエンザ・COVID-19・RSV診療ガイド2025-26』pp.202-203
マスクは何度でも触ってしっかりフィットさせ、脇漏れを減らしましょう。
マスクの吸入予防効果は、“頼り切ることはできないが、無視すべきでない”感染予防手段の一つです。生活の一部として、換気などほかの対策と組み合わせましょう。
https://x.com/FORCEPS4/status/1875094661377015860/photo/1
Take Home
Message ********************************
コロナにかぎらず呼吸器感染症の「飛沫感染」は、基本的に空中をただよう粒子の吸入による空気感染です。
マスクの吸入予防効果は、“頼り切ることはできないが、無視すべきでない”感染予防手段の一つです。
コロナやインフルの患者の家族には「エアロゾル吸入による家庭内感染を避けるためにマスクをできるだけ隙間なくつけて看病しましょう。できるだけ換気も。」という指導をするべきです。
「咳エチケット」として「とっさに袖で口元をおおうこと」とマスクを同列扱いするのはマスクの吸入予防効果を無視する誤解の元であり、やめるべきです。
ユニバーサルマスクは、有効な呼吸器感染症の蔓延防止対策です。
マスクの脇漏れはできるだけ減らすのが大事です。いくらでもマスクを触って顔にフィットさせましょう。
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